男女それぞれ、着々と強化合宿計画を進める全日本代表チームですが、一方で実施の目途を立てられずにいるのが「国際大会への派遣」です。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)の中で、これは世界全体の滞りでしたが、今月からヨーロッパでは多くの国際大会が開かれ始めました。積極的に参加するヨーロッパ諸国の最大の狙いは、大会のメダル獲得ではなく、実戦感覚の磨き直しです。
近年、目覚ましい成長を見せているアジアのボクシング界が、超えられそうで超えられない存在がヨーロッパです。ヨーロッパはオリンピックのルーツであり、競技ルールの決定権などでも、力を持つことも多いですが、ヨーロッパの専門家たちには、こうした政治的な主導権の掌握よりも、「目まぐるしくルール改正の行われるオリンピック・スポーツで、国際大会の数が圧倒的に多いことこそがヨーロッパの強みである」と分析する声も多くあります。
これに共感したアジア諸国も多く、一定期間の活動制限を承知で、ヨーロッパに渡航する国家チームもあります。インド代表チームの男子10選手、女子6選手は10月27日から31日まで、フランスで行われるアレクシス・バスティン国際トーナメント(フランス)と、11月2日から7日まで行われるレゼックドロゴス・メモリアル(ポーランド)に参加する条件を満たすため、その52日前にヨーロッパへ入り、アッシジ(イタリア)で単独合宿を行っています。
なお、インドの新型コロナウイルス感染者はアジアで群を抜いた世界2位の現状があり、ヨーロッパでは、今月から数ヶ月ぶりに同感染者がアジアを上回りました。新型コロナ禍は今後も油断大敵であることに変わりありませんが、前例のないパンデミックの中、前例のない強化策が求められることも確かです。