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インタビュー】ボクシングの採点はどう変わるのか(渡辺守成座長)

2019-11-27 12:07:00

 今月24日まで鹿児島県の阿久根市総合体育館で行われていた『第89回全日本選手権』には、AIBA(国際ボクシング協会)に代わって2020年東京オリンピックのボクシングを運営するIOC(国際オリンピック委員会)特別作業部会(タスクフォース)で座長を務めている渡辺守成氏も視察に訪れました。この部会で行われているのは、これまでどおりのルールを公平に裁くことだけではなく、より分かりやすく高度な採点への進化です。次のルールはどんな方向に進んでいくのでしょう。渡辺氏に伺いました。

 

――大会中、メモを取りながらスクリーン公開される採点や、それを観る客席の反応を確認されている一方で、試合観戦にも熱心な様子でした。
「私は今までプロボクシングしか観ていませんでしたが、こうして携わってみると、こちら(オリンピック)のほうが好みだと感じるんです。計3ラウンドの短時間で、必死に戦うのがとても面白い。それに、海外でも世界中の様々な国のボクシングを見せていただきましたが、小さな子供たちが真剣に取り組んでいて、礼儀やフェア精神も植えつけられていたんです。スポーツを通じた人間教育にも、ボクシングが有効であることは確かめられました」
――12月26日に墨田区総合体育館で行われる大会では、中米から幼い選手を招いて試合をさせる提案をされたそうですね。
「中米では主に国内の貧困層がボクシングをやっていました。生活の不自由なスラム街などにボクシングクラブが多くあって、そこに子供たちが通っている。彼らに夢というかチャンスを与えたいと思ったんです」

 

――今回の全日本選手権で、ジャッジ席に置いた機械は東京オリンピックのテストイベントで試験されたモニタリングシステムの発展形態ですか?
「そうです。今回は『ノーマルパンチ』のボタンしか使っていませんが、ボタンは6つに増えています。『ハードパンチ(強打)』、『ディフェンス(防御)』、『ドミナンス(優勢)』のボタンを検討しています」

――これはあくまでモニタリングであって、来年の東京オリンピックまでにルールを大幅に変えることはしないと断言されました。

「開催まで1年以内の時期に、ルールを変えたら競技関係者の理解を得られませんから。ただ、今のテクノロジーを使えば試合はもっと高度に採点することができます。 すぐ思いつくアイデアであれば、パンチカウントではなく、ダメージを踏まえてカウントにするとかですね」
――特別作業部会の座長に就かれた直後、AI(人工知能)の導入もあると述べました。
「それは当然の時代ですが、今はこうして、現場で使った際の審判の意見を吸収してアップグレードしていくしかないですね」

 

現場の指導者からルール変更への

意見を確認する渡辺座長


――東京オリンピックではラウンド終了時に途中採点を公開する方針を決めました。
「今回の全日本選手権でも、途中採点を公開できないか現場のみなさんに確認しましたが、“代表選考会を兼ねた試合で、戦略に大きな影響を与えないほうがいい”となりました。また、途中採点を公開すると、勝ちを確信した選手が最終ラウンドを逃げ回るマナー違反が生じやすいという意見もありました。とはいえ、私がこれまで携わってきた体操でも、前半に勝負をかけて、後半、安全策を取るとのはありますからね。たとえ最終ラウンドを守りに入っても、競技が成立しないというところまでは陥らないと、個人的には予想しています」
――途中採点を公開しない現在でも、例えばオリンピック予選などでは、準々決勝で通過が決まってしまえば、お互いにケガをしたくないので次の試合でさっさと負けてしたい“無気力試合”も多発しています。
「オリンピック・ボクシングでは、プロオリンピックとは違って当日に計量をして、短い期間で何試合も戦いますから、試合1つ1つだけではく、大会全体でもペース配分が問われてきますよね。それはルールの中で工夫してもいいと思っています」

 

オリンピックで実施されない49kg級と60kg級の準決勝から途中採点の公開が試された。

 

――まずは透明性を高めなければ、次に進まないと認識されているということでしょうか。
「暗いトンネルから表に出るとなかなか目が慣れないように、今までのあやふやな部分を一気に明確にすることには、きっと抵抗があると思います。でも将来性を考えると、明るいほうがいいと思うんです。次世代の子供たちがボクシングをやってくれるかどうかは、透明性をどれだけ高められるかどうかだと私は思っています」
――ルールが改善され続けた先に、この競技はもっと魅力的なものに変わると思いますか?

「この競技にはもっと発展性があるはずです。そのために私はできる限りの貢献をできればいいと思っています」