写真:2015年アジア選手権で対戦したザキール・サフィーリン選手(カザフスタン)と今年の正月にスパーリングで再び拳を交えた成松。
前回のキューバ編で反響の多かった東京オリンピック予選代表の男子63kg級・成松大介(自衛隊体育学校)によるカザフスタン合宿で体感した強豪国の強さや突破口――。今回は過去の国際大会で2戦2敗を喫しているのものの、合宿で“ぶつかり合う自信”を持てたと言うカザフスタンについて聞きました。
写真:世界ボクシングアカデミーに大勢集まっていたカザフスタンの強豪選手たち。ボクシングへの関心度の高さを、成松も今年の滞在で確認した。
成松「まずボクサーは大前提として、対戦する相手に“勝てない”と思わないことが基本にあります。その上で自分の経験と照らし合わせて、キューバ人には“張り合えない”と割り切る面を見定めましたけど、まずはキューバの代表でもカザフスタンの代表でも、自分に自信を持って向かい合います。正月の合宿に参加していたカザフスタンの選手たちには張り合えないと感じた点はありませんでした。自分はフィジカルで劣るとも感じませんでした。日本人にはカザフスタン人のトップ選手と同じ域まで強くなる潜在能力を持っていると思います。戦い方は、前の手を遠めに突き出した構えで、懐の深いスタイルを基本にするタイプが多い一方で、打たせながら立ち向かって来る気合いも持ち合わせています。キューバ人の弱点として、アゴが細い小顔なので打たれ弱そうな印象を持ちましたが、カザフスタンのトップ選手たちには打たれ強そうな顔の選手が多かったですね。打たれることを極端に嫌がる感じではないですが、スター性と言うかナルティシズムも感じます。これはカザフスタン国内でボクシングの社会的地位がとても高い影響なのでは…と感じました。この活気が選手層を厚くしていますね。それと、とにかく毎日、たくさんの肉を食べます。その文化が長いと、人間は腸が短くなるとも言われていて、腸は短いほうがボディブローが効きやすいとも言われています。日本人はサムライ・スピリッツで我慢強く、ボディブローを当てるまでの組み立てをハイレベルで研究していますから、打ち込まれても効きづらいと思っています。3分3ラウンドでスタミナを削るのは難しいですが、ボディに突破口を見出すのも一手かも知れないです。相手を知って己を知る。一見、面食らうほど強い相手でも、弱点を考え続ける。この姿勢はカザフスタンに対してもキューバに対しても変わりないですね」
感じた様子だった成松