IBF元世界王者のツァイはベスト8で敗退した(Photo by AIBA)
先日の全日本女子・社会人選手権でも、キックボクシングの松田玲奈(葛飾クラブ)やサッカーの阿部陽輔(K&K)といったプロスポーツ経験者が、6ヶ月の引退期間の条件をクリアして出場し、勝利も収めましたが、直前の世界女子選手権にも、プロ格闘技経験者が多く出場しています。 並木月海(自衛隊体育学校)に2回戦で敗れた Leonecia Sanchez(アルゼンチン)は、マイナー団体のプロボクシング世界王者で、同級の中国代表だった Cai Zongju はメジャー団体IBF(国際ボクシング連盟)の元・世界ミニフライ級王者です(日本の多田悦子から王座を奪取)。2016年リオデジャネイロ五輪から2020年東京五輪への過程で、「五輪で唯一プロ選手が参加できない競技」といわれたボクシングが、本格的に変わり始めました。それ以前のAIBA(国際ボクシング協会)はボクシング以外のプロ格闘技経験者にも、2年間の引退期間を課していました。
そして最近、アメリカ大陸で話題を集めたのは、メキシコとアメリカの二重国籍を持つプロボクシング世界ヘビー級王者アンディ・ルイス・ジュニアに、メキシコ大統領が、東京五輪出場を誘ったことでした。今年6月、大番狂わせでアンソニー・ジョシュア(英国)を破り、WBA、IBF、WBOの世界王座を一気に奪取したルイスは、ボクサーらしからぬ“ぽっちゃり体系”とチャーミングな笑顔で、一躍、人気者となっています。以前には100戦以上のアマ試合経験があり、国内ジュニア五輪で金メダルを2度獲得したこともあったそうです。五輪出場を意識して、世界選手権にも出場したことのあるルイスだからこそ、大統領からの手紙に関心を示し、「メキシコ代表になるのは光栄だ。契約を確認する必要があるが、可能な限り貢献する」とSNSで発信したのでしょう。メキシコは世界一のプロボクシング強豪国である一方、半世紀以上、ボクシングの五輪金メダルを獲得していない課題を持っています。
しかし、プロボクシング界でも賛否両論なのがプロボクサー五輪開放です。特に激しく反対しているWBC(世界ボクシング評議会)はアマチュアの試合に参加した選手に2年間、ランキングからの除外を決め、今回もルイスに警告しました。そして結局、ルイスは先日、「アマチュアとしての私の時間はずっと前に終わった。若者に機会を与えたい」と断念を表明しています。
しかし、来年の五輪予選が近づく中、今後も名のあるファイターたちの参戦が話題を集めるかもしれません。上述の松田も、全日本選手権で和田まどか(福井県スポーツ協会)に敗れた際、「負けたのは悔しいがボクシングは楽しかったので、まだやりたい気持ちもある」とコメントしています。