2028年にロサンゼルスで夏季オリンピック開催国も担う米国が、今年の世界選手権に関して男子大会、女子大会ともボイコットを表明し、アイルランドもこれに加わったことが、波紋を呼んでいます。このボイコットにより、前回の女子世界選手権イスタンブール大会で優勝したエイミー・ブロードハースト選手(アイルランド)やリサ・オルーク選手(同)、ラシダ・エリス選手(米国)、男子同選手権セルビア大会で優勝したジャフマル・ハーベイ選手(米国)の連覇は不可能になりました。
ボイコットの理由として、米国は大会を主催するIBA(国際ボクシング協会)がIOC(国際オリンピック委員会)からガバナンス問題、財務の不正疑惑、透明性の欠如(競技の採点を含む)を指摘されていることを挙げました。また、IOCがロシアとベラルーシに関して、昨今の戦争問題によって旗や歌のような国の象徴を掲げることを禁止している中で、IBAがオリンピック採用種目で最初にこれを解禁したことにも懸念を示し、その戦争でウクライナのミハイロ・コレノフスキー監督らナショナルチームの選手・関係者にも死者が出ていることから「政治の中立性に欠く」と批判しました。IOCは、事業計画への追加を保留した2028年ロサンゼルス・オリンピックのみならず、2024年パリ・オリンピックでのボクシング競技実施を中止する可能性も示唆し、IBAの現状を警告しています。
これを受け、IBAのウマール・クレムリョフ会長は「選手が世界王者になる夢は、誰にも奪う資格がありません。IBAは、米国の選手が世界選手権に参加することを最大限に支援し、両国の国旗と国歌の下で参加してもらいます」と抗議。ボイコット参加国に強力な制裁を追求することを予告しました。また、かつて不公平な判定の象徴的な被害選手とされ、現在はIBAからその改善を務めるリーダーを任されたロイ・ジョーンズ・ジュニア氏(米国)は、自国のボイコットに「この決定はボクサーではなく、当局のみから下されており、現実とは無関係の陳腐な意見です」と遺憾の意を示し、米国内の参加希望選手を世界選手権で個人管理することを希望しました。
女子世界選手権2023は3月15日から26日までインドの首都ニューデリー、男子世界選手権2023は5月1日から14日までウズベキスタンの首都タシュケントで開催予定です。